アブストラクト（6巻3/4号：神奈川歯学）

神奈川歯学

Japanese

Title　： 唾液腺線条部に対する松果体摘出及び光の影響に関する病理学的研究
Subtitle　： 原著
Authors　： 久田太郎, 長井好子
Authors（kana）　：
Organization　： 神奈川歯科大学病理学教室
Journal　： 神奈川歯学
Volume　： 6
Number　： 3/4
Page　： 47-59
Year/Month　： 1972 / 5
Article　： 原著
Publisher　： 神奈川歯科大学学会
Abstract　： マウス顎下腺線条部に於ける性的差異について, Lacassagne(1940)の報告がある. 以後, 顎下腺線条部と内分泌の関係が種々検討されているが, 未だ一致した見解に到達していない. 著者らはWistar系ラットを用い, 唾液腺, 特に顎下腺線条部の性的差異を検索し, 更に顎下腺線条部及び性腺に対する松果体摘出の影響, 光の明暗による影響について病理組織学的に検討し, 併せて顎下腺線条部の顆粒について組織化学的検索を行なった. 正常ラットの顎下腺線条部に於いて, 性的差異が著明に認められた. 即ち雄は線条部直径が大きく, 腺上皮の丈も高く, 核は基底部に位置し, 内部に多量の顆粒が充満している事を確認した. 雌に於いては直径も小さく, 顆粒も極めて少い. しかし, 耳下腺, 舌下腺に於いては性的差異は認められなかった. 従来, 松果体は性腺との関係が重要視され, 光と松果体との関係も種々論議されている. 又, 松果体を摘出する事により性腺に影響を与えたという報告もある. しかし, 著者らは生後20日のラット松果体を摘出し, 2ヵ月後に性腺及び唾液腺を検索(雌30匹)したが, 性腺には全く著変が認められず, 耳下腺, 舌下腺に於いても同様であった. しかし, 雌の顎下腺に於いては線条部に極めて僅かに男性化masculinizationがみられた. なお顎下腺の平均重量は, 松果体摘出群0.435gr, 対照群0.45gr, 卵巣平均重量は, 松果体摘出群0.103gr, 対照群が0.109grであり, いずれも統計学的に有意な差異を認めなかった. 卵巣の組織学的検索に於いても両群に特異な差異を認め得ない. 即ち生後20日に於ける松果体摘出は, 顎下腺線条部及び卵巣に対する明らかな影響を証明する事は出きなかった. しかし極めて軽度の男性化の傾向は全く否定する事は出きない. 次に連続照明及び連続暗黒による光の顎下腺線条部及び性腺に対する影響を検索したが(計60匹), 松果体摘出の場合と明らかに異なり, 連続暗黒群の雌ラット線条部は男性化の所見が極めて著明となる. これに反して連続照明を行なった群では, 女性化の傾向が一層強く現われてくる. 即ち連続暗黒では線条部直径の増大, 顆粒の増加が極めて強く, 連続照明では直径も小さく, 顆粒も減少し, 全く顆粒の認められないものも少くない. 両群の卵巣及び子宮の平均重量を比較すると, 照明群は0.66±0.26grであるのに反し, 暗黒群は0.30±0.07grを示し, 著明な卵巣重量の低下を認めた. 組織学的には照明群の卵巣は, 暗黒群に比較して1次, 2次成熟卵胞及び黄体の発育が極めて著明である. 又, 暗黒群の子宮内膜上皮は円柱状のものが多いのに反し, 照明群では立方状を示す. この事は, 照明群では卵巣機能の亢進, 性周期の短縮, 発情期の延長が推定され, 暗黒群では卵巣機能の低下を物語るものである. 本群に於いては, 雌ラット顎下腺線条部及び卵巣に対して光の影響が極めて明らかである事が証明された. 耳下腺, 舌下腺には明らかな変化を認めない. 次に雄ラットについて同様の検索を行なったが連続照明及び連続暗黒群共に大差はなく, いずれも雄特有の所見を示し, 雌が連続暗黒に於いて, 顎下腺線条部の男性化を示すのに反し, 雄に於いては光に対する影響が著しくない事を示している. 睾丸について検索すると連続照明群は, その平均重量が3.32±0.18gr, 暗黒群は2.75±0.56grで統計的に有意な差異を示すことはできない. 更に顎下腺線条部に出現する顆粒について組織学的検索を試みた. この顆粒は, 酸性粘液多糖類, 硫酸粘液多糖類, 中性粘液多糖類, glycogen, 鉄, 脂肪, amyloid等を含まない一種の多糖類と考えられるが, この意義及び出現機構については全く不明である. 今後種々の条件のもとに検索を加えたい. なお, 終末細胞は, 今回の実験に於いて, いずれの場合にも特別な変化は認められなかった.
Practice　： 歯科学
Keywords　：

English

Title　： Pathological Studies of the Effect of Pinealectomy and Light on the Striated Portion of the Salivary Gland
Subtitle　： Original article
Authors　： Taro Hisada, Yoshiko Nagai
Authors（kana）　：
Organization　： Department of Pathology, Kanagawa Dental College
Journal　： Kanagawa Shigaku
Volume　： 6
Number　： 3/4
Page　： 47-59
Year/Month　： 1972 / 5
Article　： Original article
Publisher　： Kanagawa Odontological Society
Abstract　： Lacassagne (1940) reported on the sex differences in the submaxillary gland of mouse which did not contain much information. Using Wistar rats, the authors performed histopathological examination of the sex differences in the salivary gland, especially the striated portion of the submaxillary gland, and the effect of pinealectomy and light and darkness and simultaneously histochemical examination of the granules in the striated portion of the submaxillary gland. Remarkable sex differences were observed in the striated portion of the submaxillary gland of normal rats. It was confirmed that the males showed a larger average tubule diameter and a greater height of the cell of tubule with the interior filled with voluminous granules than those of the females. However, no sex difference was observed in the parotid gland or the sublingual gland. Some papers report that pinealectomy influences the sexual gland but in our result of pinealectomy performed on rats on the 20th postnatal day, no remarkable change was observed in the sexual gland. It was true of the parotid gland and the sublingual gland also. However, very slight masculinization was observed in the striated portion of the submaxillary gland of the females. The effect of light was conspicuous in the female rats. Masculinization in the striated portion of the submaxillary gland was remarkable in the group subjected to continuous darkness and feminization was further marked in the group subjected to continuous light. Similarly in the sexual gland, the female rats of the continuous light group showed an increase in the weight of the ovary and the uterus with accentuated function observed histologically. A contrary phenomenon was observed in the continuous darkness group. However, the males showed no remarkable change. Both sexes showed no change in the parotid gland and the sublingual gland. Histochemical examination of the granules emerging in the striated portion of the submaxillary gland was attempted. It is thought that these granules are PAS-positive substances not containing acidic or neutral mucous polysaccharides, glycogen, lipid, iron or amyloid and their main constituent is a kind of polysaccharide.
Practice　： Dentistry
Keywords　：