アブストラクト(37巻4号:神奈川歯学)

神奈川歯学

Japanese

Title : 女子骨格性下顎前突における顎顔面形態の成長変化およびチンキャップ装置の顎整形的効果
Subtitle :
Authors : 簑島保宏
Authors(kana) :
Organization : 神奈川歯科大学大学院歯学研究科
Journal : 神奈川歯学
Volume : 37
Number : 4
Page : 176-177
Year/Month : 2002 / 12
Article : 報告
Publisher : 神奈川歯科大学学会
Abstract : 本研究では, 始めに未治療女子骨格性下顎前突における顎顔面形態の成長パターンを調べると同時に日常臨床で汎用されている歯の萌出年齢と暦年齢との関連性に関する研究も少ないことから, 両者間を比較検討した. 次に, チンキャップ装置の短期間と長期間使用群との顎顔面形態の治療前, 後と保定後の差を比較して, 顎整形的効果について検討を行う事を目的とした. 資料は, 未治療女子骨格性下顎前突者1,586名(年齢範囲:3歳1ヵ月から47歳11ヵ月)の側貌頭部X線規格写真(セファロ)を用いて横断的観察を行った. 短期間使用(思春期成長時のみ使用)群は, 女子40名の初診(T0)時:平均8歳4ヵ月, 動的処置終了(T1)時:平均14歳4ヵ月, 保定終了後経過観察(T2)時:平均17歳7ヵ月のセファロを用いて縦断的観察を行った整形力は両側500g前後で1日8時間以上の使用を指導し, 牽引方向は下顎頭方向に行った. 使用期間は平均2年5ヵ月であった. 長期間使用(思春期成長以前から晩期成長終了時まで使用)群は, 女子40名のT0時:平均8歳3ヵ月, T1時:平均13歳8ヵ月, T2時:平均18歳4ヵ月のセファロを用いて縦断的観察を行った. 整形力は最初の2年間は両側300g前後で1日14時間以上, その後は両側200g前後で睡眠時のみ使用を指導し, 牽引方向は下顎頭方向および頭頂方向に行った. 使用期間は平均7年2ヵ月であった. 方法は, 横断的資料に用いたすべてのセファロは透写図を作成し, コンピュータによるセファロ分析プログラムを用いて計測点を設定した後, S点を通りF-H平面に平行な横軸(x軸), x軸に垂直でS点を通る縦軸(y軸)を座標軸として設定した. 縦断的資料に用いたすべてのセファロも透写図を作成し, コンピュータに入力後, 各計測点のx-y成分, 距離, 角度計測値を算出し, 二次元的位置変化を調べた. 結論として, 1. 未治療女子骨格性下顎前突の顎顔面形態は上顎骨の若干の劣成長と下顎骨の過成長を伴っており, 経年的に下顔面高の割合が大きくなり, 下顎角が開大するような長顔型の成長パターンである. 2. 顎顔面成長変化および顎整形的効果を比較検討するには年齡範囲の狭い暦年齢分類が有用である. しかし, 日常臨床上, よく使用されている歯の萌出年齢分類を用いる場合には対応する年齢を用いれば統計上, 利用できる. 3. 短期間使用群症例の顎顔面形態は, 中顔面型で上顎がほぼ正常で下顎が前方位を呈していたのに対し, 長期間使用群症例は長顔型で骨格性要因が大きい下顎前突であった. 4. チンキャップ装置の短期間使用群での顎整形的効果は下顎骨の後下方への回転, 下顎角の若干の狭小化と上顎骨の前方成長による相対的成長抑制であった. 5. 長期間使用群では下顎骨の後方回転, 下顎角の顕著な狭小化と下顎骨の絶対値的成長抑制による形態変化であり, その効果は17歳以降でも維持されていた.
Practice : 歯科学
Keywords :