アブストラクト(38巻2/3号:神奈川歯学)

神奈川歯学

Japanese

Title : 歯科材料成分の生体に及ぼす影響‐妊娠期,授乳期および幼弱期投与での性ホルモン合成に関する研究‐
Subtitle : 神奈川歯科大学大学院歯学研究科博士論文 内容および審査の要旨
Authors : 齋藤大輔
Authors(kana) : さいとうだいすけ
Organization : 神奈川歯科大学大学院歯学研究科歯科保存学講座
Journal : 神奈川歯学
Volume : 38
Number : 2/3
Page : 114-115
Year/Month : 2003 / 9
Article : 報告
Publisher : 神奈川歯科大学学会
Abstract : [論文内容要旨] 外因性内分泌攪乱化学物質(EDCs)は体内に取り込まれると, 体内に本来存在している内因性のホルモンと同じ様な作用を発揮し, その働きを阻害する物質で, "環境ホルモン"と言う名で広く知られている. EDCsは, エストロゲンレセプター(ER)と結合し, 女性ホルモン様作用を引き起こすとされ, 特に雄への影響が注目されているがそのメカニズムについては統一した見解は得られていない. 歯科領域においてEDCsとして注目されている物質のひとつにbisphenol A(BPA)がある. BPAはエストラジオール-17β(E2)と構造的に類似しており, ERに結合し女性ホルモン様作用を示すとされている. このBPAは日常の歯科治療において使用頻度の高い材料中に含有しており, 極微量に溶出を認める報告がある. EDCsは低濃度での作用が大きいとされることから, 微量の溶出であっても無視し得ず, EDCsを研究する大きな問題点となっている. そこで著者は, 性腺発達期のラットに低濃度(5μg), 高濃度(5mg)のBPA, Bis-GMAを, また, 産まれてくる次世代ラットへの影響を検討するために, 妊娠ラットにコンポジットレジン成分の安全面を考慮して, 5μgのBPA, Bis-GMAにTEGDMA, UDMAを加え, これらを200μlのcorn oilに溶解したものをそれぞれのラットに皮下投与し, 雄ラットの性ホルモン分泌に及ぼす影響について検討した. 対照群はコントロールとしてcorn oilのみを投与した. 性腺発達期投与実験では, 体重, 精巣重量占有率に影響はみられなかったものの, RIAで計測した血清中のテストステロン(T)濃度は, 低濃度BPA, Bis-GMAで有意に低い値を, またE2濃度では, 高濃度BPAで有意に高い値を示した. 次世代ラットへの影響は, 体重はTEGDMA投与群において高い値を示し, 血清中T濃度は, BPA投与において有意に低い値を示した. そこで, T合成関連酵素の活性の変化が疑われたことから, 摘出した精巣を用いて薄層クロマトグラフィにて17α-hydroxylase, 17β-Hydroxysteroid dehydrogenaseの活性を測定したところ, 二つの酵素ともにBPA, Bis-GMA投与群において有意に高い値を示した. 以上のごとく, BPA, Bis-GMAは高濃度より低濃度で性ステロイドホルモン合成を攪乱することが示された. また, その作用は曝露時期の早い妊娠期では, 精巣内代謝関連酵素にまで及ぶことが判明した. しかしながら, 血清中T濃度の結果から考えあわせると, 精巣内でのTの蓄積, もしくは精巣に僅かに存在するaromataseが活性化されTからE2へ変換された可能性が示唆された.
Practice : 歯科学
Keywords :