アブストラクト(38巻2/3号:神奈川歯学)

神奈川歯学

Japanese

Title : 抗セメント質由来細胞接着因子モノクローナル抗体作製とセメント質形成機構解析モデルの構築
Subtitle : 神奈川歯科大学大学院歯学研究科博士論文 内容および審査の要旨
Authors : 半田慶介
Authors(kana) : はんだけいすけ
Organization : 神奈川歯科大学大学院歯学研究科歯科保存学講座
Journal : 神奈川歯学
Volume : 38
Number : 2/3
Page : 116-117
Year/Month : 2003 / 9
Article : 報告
Publisher : 神奈川歯科大学学会
Abstract : [論文内容要旨] Cementum-derived attachment protein(CAP)は, セメント質に特異的に存在する分子量56kDaのコラーゲン性タンパクで, 間葉系細胞の接着を誘導することが報告されてきた. 本研究では, CAPとセメント質形成機構との関連性を調べるため, 抗CAPモノクローナル抗体(3G9)を作製し, 発生期歯胚におけるCAPの発現を調べた. 歯根形成期ウシ歯胚において, CAPはセメント質およびセメント芽細胞に限局し, 象牙質および歯槽骨には存在しない事が示された. 3G9を用いて抗体カラムを作製し, ウシ歯胚よりCAPを精製すると65kDaのタンパクとして精製された. これらの結果より, CAPはセメント質のマーカー分子となる可能性が示唆された. 次に3G9を指標に歯小嚢細胞中にセメント芽細胞前駆体が存在するか否かを検討した. 歯根形成期ウシ歯胚から歯小嚢を採取しコラゲナーゼ消化にてウシ歯小嚢細胞(Bovine Dental Follicle Cells;BDFC)を分離培養した. 歯槽骨骨芽細胞(Bovine Alveolar Osteoblasts:BAOB), 歯根膜細胞(Bovine Periodontal Ligament Cells:BPDL)も同様の方法で分離培養し比較検討した. In vitroにおいてBDFCは, 低いアルカリフォスファターゼ活性を持ち, RT-PCR法によってosteopontin(OP), type I collagen(COL I)のmRNA発現を認めたが, osteocalcin(OC)のmRNA発現は低く, 未分化な表現型を示していた. 次にBDFCの分化能を決定するため, severe combined immunodeficiency(SCID)miceの皮下に4週間移植し分化誘導を試みた. その結果, 移植されたBDFCは3G9陽性なセメント質マトリックスを形成し, またその周囲には線維性組織も形成することが観察された. 移植片の遺伝子発現を解析したところOC, OP, COL Iおよびbone sialoprotein(BSP)のmRNA発現が確認され, セメント芽細胞に分化したことが確認された. 一方, in vitroにおけるBAOBは高いアルカリフォスファターゼ活性を持ち, OC, OP, COL IおよびBSPのmRNAを発現した. 移植実験においては, 3G9陰性の骨様石灰化物の形成が認められた. 興味深いことに, BPDLの性質はBDFCに似ており, 移植実験においても線維組織の形成と少量の3G9陽性のセメント質様石灰化物を形成することが観察された. これらの結果より, セメント芽細胞前駆体はBDFC中に存在し, そしてこれらの細胞がin vivoでセメント芽細胞に分化することが明らかにされた. また本研究で確立された実験系は, セメント質形成機構の分子メカニズムの解析に有用であることも示された.
Practice : 歯科学
Keywords :