アブストラクト(38巻2/3号:神奈川歯学)

神奈川歯学

Japanese

Title : 小児口腔におけるPorphyromonas gingivalisの検出ならびに伝播に関する研究
Subtitle : 神奈川歯科大学大学院歯学研究科博士論文 内容および審査の要旨
Authors : 檜山雄彦
Authors(kana) : ひやまたけひこ
Organization : 神奈川歯科大学成長発達歯科学講座
Journal : 神奈川歯学
Volume : 38
Number : 2/3
Page : 127-128
Year/Month : 2003 / 9
Article : 報告
Publisher : 神奈川歯科大学学会
Abstract : [論文内容要旨] Porphyromonas gingivalisは, 成人性歯周疾患の主たる病原性細菌と考えられており, 口腔内に付着, 定着することが歯周病発症の第一段階と考えられる. P. gingivalisの口腔内での付着, 定着因子としては, 線毛や血球凝集素, 細胞外小胞体, 外膜タンパク質等が挙げられる. P. gingivalisの線毛は, 抗原性やN-末端アミノ酸配列の相違により4種類の遺伝子型に分類されている. 線毛の遺伝子型と歯周疾患については成人における報告が認められるものの, 小児における線毛の遺伝子型についての報告は現在までのところ認められない. 本研究ではP. gingivalisの16SrRNA遺伝子および線毛遺伝子から設計したプライマーを用いてPCR法を行い, 小児および成人におけるP. gingivalisの検出率ならびに線毛の型別による親子間でのP. gingivalisの伝播について検討を行った. 16SrRNA遺伝子の増幅による小児プラークサンプルからのP. gingivalisの検出では, 78名中63名(80.8%)にP. gingivalisの存在が認められた. この63名について, 線毛遺伝子の増幅を行ったところ, 76.2%の小児がI型線毛株を有しており, II型, III型線毛株を有していた小児はそれぞれ3.2%, 6.3%と低い割合であった. さらに, IV型線毛株は検出されず, 線毛遺伝子で増幅の認められなかったものが20.6%であった. 成人におけるP. gingivalis線毛遺伝子の増幅では, 55名のサンプル全てが線毛のプライマーで増幅され, P. gingivalisの検出率は100%であった. 線毛の型別では, I型線毛株が85.5%, II型線毛株が58.2%, III型線毛株が9.1%で, IV型線毛株が12.7%に認められた. また, 2種類以上の線毛型が検出されたサンプルは32例認められ, 全体の58.2%を占めた. 線毛の型別に基づくP. gingivalisの伝播経路については, 10家族を対象にPCR法を行った結果, 9家族において母親とその子供の線毛型が一致し, 母子間での垂直伝播の可能性が強く示唆された. しかし, 子供が保有している線毛型を母親が保有していない家族も1例認められたことから, P. gingivalisが母親以外からも伝播する可能性が示唆された. 以上の結果より, P. gingivalisは, 小児においても高率に検出可能であり, 臨床的には重篤な歯周疾患が認められないにも拘わらず, 早期に伝播していることが判明した.
Practice : 歯科学
Keywords :