アブストラクト(39巻2/3号:神奈川歯学)

神奈川歯学

Japanese

Title : 細胞工学, 遺伝子工学の融合による歯周病再生医療のアプローチ
Subtitle : 公開シンポジウム 口腔領域における再生医療の展開 -発生工学, 細胞工学, 遺伝子工学, 理工学の融合-
Authors : 齋藤正寛
Authors(kana) :
Organization : 神奈川歯科大学・口腔治療学講座・顎機能先端研・生体材料開発部門
Journal : 神奈川歯学
Volume : 39
Number : 2/3
Page : 109-109
Year/Month : 2004 / 9
Article : 抄録
Publisher : 神奈川歯科大学学会
Abstract : 高齢化社会を向かえた今, 歯および口腔の健康維持は, 全身疾患のみならず老化に伴うQOLの低下を予防する重要な因子である. このような口腔機能は加齢と共に進行する歯周病による歯の喪失により崩壊される. そのため歯周病には対症療法による治療のみでなく, 歯周組織を再構築させ, 口腔機能を回復する再生医療技術の研究開発が必要になる. 歯周病は40歳を超える国民の約50%以上が罹患する生活習慣病であり, その約10%は外科的処置を必要とする大きな骨欠損を伴う重篤な歯周病に罹患していることが報告されている. この報告は, 我が国で1,000万人以上の歯周疾患患者が歯周病再生医療を必要とする可能性が高いことを示している. これまでの歯周病の再生医療研究は, 補填剤を用いた再建外科処置が主で, これらは患者自身の再生能力に依存する手法であった. 現実に3壁性骨欠損の症例において, これらの再建療法の有効性が報告されている. しかし元来, 体内に存在する幹細胞のみで, 失われた組織を全て再生することはほぼ不可能に等しい. そのため, 高度に進行した症例あるいは全身疾患を有する症例および高齢者の歯周病に対してはなす術が無いのが現状である. このような症例に対応するには, 幹細胞を直接歯根面に移植し, 人為的に新生セメント質, 歯根膜および歯槽骨を再生させる技術の開発が必須になる. 幹細胞とは万能性を有する細胞の事を称し, 近年ではこれらの細胞を移植することにより組織再生を誘導する再生医療技術の開発がなされている. 演者らは歯周組織においても, その発生過程で歯小嚢中に歯根膜およびセメント質形成能力を有する幹細胞が存在し, これらの細胞が分化した歯根膜中にも存在する事が最近明らかにしてきた. この細胞の特徴は腱マーカー分子を発現しており, 移植実験により生体内で歯根膜-セメント質構造を構築できることにある. 従って成人歯根膜からこのような幹細胞を分離する事が出来れば, 幹細胞移植による結合組織性再付着を誘導する歯周病再生療法が可能となる1). 本シンポジウムでは歯小嚢中に存在する幹細胞の採取方法を紹介し, そしてこれらの細胞を用いた歯周病再生医療の可能性について述べる予定である. 1. 齋藤正寛, 歯周組織幹細胞と再生医療への展開(再生医療工学の最先端 筏義人監修)シーエムシー出版260-265. 2002
Practice : 歯科学
Keywords :