アブストラクト(39巻2/3号:神奈川歯学)

神奈川歯学

Japanese

Title : エムドゲインによる歯周組織の再生機構
Subtitle : 公開シンポジウム 口腔領域における再生医療の展開 -発生工学, 細胞工学, 遺伝子工学, 理工学の融合-
Authors : 川瀬俊夫1, 3, 出口眞二2, 3
Authors(kana) :
Organization : 1神奈川歯科大学・自然科学講座・歯科生体工学分野, 2神奈川歯科大学・口腔治療学講座・歯周病学分野, 3神奈川歯科大学・顎機能先端研・生体材料開発部門
Journal : 神奈川歯学
Volume : 39
Number : 2/3
Page : 110-110
Year/Month : 2004 / 9
Article : 抄録
Publisher : 神奈川歯科大学学会
Abstract : 【目的】歯周病治療の多くは, 歯周組織再生を目指し, すでに広義な再生医工学(Tissue Engineering)を応用している. 近年アメロジェニンを主成分とするエナメル基質タンパク質(エムドゲイン(R), Enamel Matrix Protein, Enamel Matrix Derivative EMD)は臨床に応用され, その成果が報告されている. EMDによる歯周組織の再生は歯槽骨とセメント質の再生が起こることから, 歯根膜に存在する組織性幹細胞の骨系細胞への分化誘導が期待される. McCullochら(Anat Rec 1987, J Periodont Res 1991)は歯根膜の幹細胞は歯槽骨骨髄由来幹細胞がmigrateした細胞であると報告している. 従って, 歯周病治療の組織再生はこの骨髄由来幹細胞が歯根膜の線維芽細胞と相互作用をもち, さらにEMDによって骨系細胞に分化誘導するかが鍵となる. 本研究において, 歯根膜の線維芽細胞はヒト歯根膜由来線維芽細胞(human periodontal ligament-derived firoblasts:HPLF)を, 骨髄由来幹細胞はラット骨髄由来細胞(Rat Bone Marrow Cell:RBMC)を用いて, それぞれの細胞の応答を検索した. またEMDは分子足場(molecular scaffold)と考え, HPLF産生の細胞外基質をHPLFの培養上清のタンパク質分画(HPLF-CMP, CMP)とも比較検討した. 【材料および方法】(1)RBMCの培養:7週齢のFisher Rat(F344)の大腿骨より骨髄を採取し, 10%FCSと0.25mM AsA-2Pを含むα-MEMで培養し, 付着細胞を用いた. HPLFの培養:ヒト第1小臼歯の歯根膜をサンドイッチ法によってmigrateした細胞を用いた. (2)足場の作製とCASF活性の測定:疎水性のプレートにECMあるいはCMPを添加し, コーティング後, 85℃加熱のBSAで処理した. RBMCあるいはHPLFを播種し3時間培養し, 接着細胞数はDNA量を測定し, 細胞の伸展は位相差顕微鏡で観察した. (3)RT-PCRによる検索:ALPase, BSP, ON, OPN, OCNのmRNAの発現を調べた. (4)細胞走化活性の測定:RBMCに対するEMD, CMPあるいはHPLF-CMの遊走能を調べた. (5)RBMCとHPLFのコンタクト:confluent HPLFにRBMCを播種し, 1週間培養後, HPLFのALPase, OPN mRNAの発現をRT-PCRで調べた. 【結果および考察】EMDとCMPはRBMCおよびHPLFに対するCASF活性を十分示した. EMDとCMPの疎水性タンパク質に細胞接着活性が認められた. EMDに接着したHPLFはRBMCに対する遊走活性物質の産生が認められた. しかし, EMDにはRBMCに対する遊走活性は全くなかった. EMDに接着したRBMCのAL-Pase活性とALPase mRNAの発現が上昇した. また, OPNとOCNのmRNAの発現はコントロールとCMP接着のRBMCより明らかに顕著に認められた. さらに, HPLFはRBMCと直接接触することによりosteoblastic fibroblastに分化することが認められた.
Practice : 歯科学
Keywords :